1950〜70年代頃に、⼤規模に⾏われた⼈⼯草地への転換や拡大造林(植林)、様々な開発⾏為によって野草地が減少。さらにライフスタイルの変化により、地域社会で続けてきた草原維持のシステムがうまく機能しなくなり、阿蘇郡市7市町村の草原は、ここ約100年間で半分以下に、直近30年を⾒ても4分の1近く(⾯積にして約7,500ha)減少しました。
背景には、機械化や化学肥料の普及、茅葺き屋根の減少など農業形 態やライフスタイルの変化、⽜⾁の輸⼊⾃由化などによる畜産業の低迷、地域からの⼈⼝流出‧⾼齢化の進⾏などの社会‧経済的な状況変化が⼤きく影響しています。また、2016年度、野焼き‧輪地切り(防火帯づくり)に参加した地元の方の年齢構成は50歳代以上が68.1%を占めており、さらに阿蘇地域の⼈⼝が今後30年間でおよそ3分の2程度まで減少する予測があることから、担い手の⾼齢化や後継者不⾜は、より⼀層深刻になると考えられます。
2016年の熊本県の調査において、野焼きや輪地切りといった草原の維持活動を「10年以上継続可能」と答えた牧野組合は、面積比で約4割に留まっています。「10年は継続できない」との答えの背景には、現メンバーでは維持できるが、次の世代では難しいという見通しを持つ牧野組合が少なくありません。30年後を見据えると、非常に厳しい状況が予測されます。
※2021年(令和3年)
草原再生は非常に厳しい状況を迎えていますが、特に牧野組合員から「今より減少した状態を⽬標にしても、取り組むモチベーションは⽣まれないのではないか」「『草原再⽣』と掲げている以上、減少を⽬標にすることはあり得ない」との⼒強い声が聞かれました。30年後の未来=次の世代にどんな草原を残したいかという想いを込めて、これらの意⾒を重視する⽬標を設定することにいたしました。
“30年後も変わらない規模の阿蘇草原を残す”の実現に向けて、次の3つの柱を軸に取り組みを行っていきます。
阿蘇の草原が千年維持されてきた一番の要因は、地元の生業が維持されてきたことにあります。放牧を行うことで、草が短く保たれ、野焼きの延焼リスクが下げられる他、生物多様性も向上します。草原再生の取組では、特にあか牛放牧推進のため、あか牛の導入支援を行っています。
担い手不足や高齢化を見据えると、牧野の維持管理の省力化が欠かせません。その1つの取り組みとして、輪地切りを省力化し、野焼き時の車両の動線を兼ねた、管理道兼恒久防火帯の整備を進めています。
詳しい内容はこちらのPDFパンフレットでご覧いただけます。
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