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トピック

【報告】 阿蘇草原再生に向けた第2回意見交換会が開催されました。


開催日時:
平成18年3月2日(木)9:00〜10:00
開催場所:
阿蘇市農村環境改善センター会議室
主催:
環境省九州地方環境事務所
参加者:
牧野組合13名(11組合)、行政・関係機関8名、NPO/NGO等6名、その他4名、事務局11名
プログラム:

(1)開会
(2)あいさつ
(3)阿蘇草原再生に向けた取り組みについて
(4)牧野組合等による「野草地環境保全実施計画」の策定について
 ●−木落牧野組合における計画作成中間報告
 ●意見交換
(5)閉会

概要:

 阿蘇の草原の自然環境を将来にわたって保全していくには、実際に草原の維持・管理を担う地元の方々が、自分たちの問題として積極的に取り組むことが不可欠です。このため環境省では、平成17年度から、地元牧野組合等の方々が、良好な野草地環境の保全・維持管理に向けた計画づくりのための調査・事業計画を作成することへの支援を開始し、まずはモデル的に阿蘇市一の宮町の木落牧野組合で野草地環境保全実施計画づくりに取り組みました。
  去る3月2日、牧野組合等の方々にご参集いただき、木落牧野からこの調査の中間報告を行うとともに、参加者の皆様から忌憚のないご意見を伺い、今後の他牧野における調査・事業の実施に向けてコミュニケーションの緊密化を図っていくことを目的に、意見交換会を開催いたしました。

<木落牧野組合における計画作成中間報告>

【調査の経緯】
  木落牧野の約7割を占める野草地は、採草・放牧利用を続けていくために貴重な資源です。この野草地の環境を守ながら利用していくための計画づくりを、木落牧野組合員がモデル的に行うことで、他の牧野へも普及し、阿蘇の草原再生に貢献できればと、調査を始めました。
  昨年12月、木落原野委員会で調査の実施を決定し、担当者5名を中心に調査を始めました。長老5名に合同で聞き取り調査を行い、その後の現地調査、担当者と支援機関の打ち合わせを数回行い、計画の検討を進めています。

【調査結果】
○地名調査:
  牧野内には、かつて地形や利用状況に由来して多くの地名がありましたが、いまではわからなくなってしまったものが多くあります。今回、長老の方の協力を得て調査を行った結果、60以上の地名があがってきました。

○利用、維持管理の経緯:
  昭和30年代は牧野は全て野草地で、朝草刈り、刈り干し切り、放牧に利用。当時は、1軒当たり3頭〜4頭は牛馬を有し、全体で300頭以上放牧していました。40年代に大規模草地改良とともに酪農団地ができましたが、60年代になるとその負債返済のためにダイコン畑やシバ畑に貸したところもあります。現在は、牛の頭数が減った関係で朝草場が縮小されています。また、かつての放牧地で町道により分断された部分は、谷間に植林してから野焼きはせず、シバ畑の後、採草利用に変わっています。

○植物調査:
  原野では昔から多くの植物が見られます。改良した所では植物の種類が減っていますが、朝草場や採草地など野草地には、今も植物がかなりあります。ナデシコ、オミナエシ、ユウスゲなどは全体に広く分布しています。また、放牧地内の湿地にも重要な植物の群落が見られます。

【野草保全に向けた方向性の検討】
  調査の結果から牧野全体を9つのエリアに区分しました。そのうち、植物が多いのが野草地である4つのエリアで、保全の対象となるでしょう。そのほか、シバ畑に貸したあと野草地化しているエリアでは、今後野草地へ再生することを考えています。
  牧野の管理は、木落原野委員会を中心に進めていますが、他の牧野と同様に高齢化が進んでおり、野焼き・輪地切りについては、ボランティアの協力をお願いしなければならないと考えています。

【これまでの調査の感想】
  2ヶ月半調査をやってみると、有畜農家でありながら、現場の状況や野草地の草花など、わからないところがあることに気がつきました。今回は、冬場の調査でしたが、野焼き後には花が咲き始めるので、今後1年かけて、いつどこで何が開花しているかという調査をやりたいと考えています。

<意見交換会での主な意見>
・・・牧野組合の発言 ・・・環境省の発言 ・・・その他の発言

■野焼きだけの管理だと植物が減少してしまう。そんな状況を何とかしたい
野焼きだけしていると、カヤばかりになってしまい、昔のような野草地の植物は見られなくなってしまう。保全再生計画がただ野焼きするだけでよいのか疑問だ。5月頃から放牧すればカヤの芽が出たときに牛が食べて生育が抑えられるが、今は牛も少なくなり、そのあたりが難しい。(牧野組合)
牧野の維持管理の基本は野焼きと考えているが、更に、採草を広げていくことも重要だと思っている。ただ、採草地を広げていくには野草を利用する人が必要で、利用の主体となる牧野組合員の方々の前向きな意向が不可欠である。牧野組合自身による計画づくりを進めていこうと、モデル的に木落牧野で調査を行っている。
今年、私たちの牧野組合でも調査に手を挙げてもよいのか。(牧野組合)
ぜび環境省に連絡をいただきたい。木落でやっている調査を、他の牧野でもできないかと考えている。(環境省)

■牧野毎に条件の違いがあるなかで、どうやって草原を守っていくのか
同じ阿蘇郡市内の牧野でも、場所・構成員の年齢などそれぞれ条件が違う。阿蘇の草原を守るのに、環境省は、後継者を残して地元がずっと管理できるような方法を考えているのか、それともボランティアだけで野焼きを行うことで草原を維持していこうとしているのか。(牧野組合)
阿蘇の草原は色々な方がいろいろな形で関わっている草原であり、一つの方法だけでは残せない。野焼きさえできなくなってきた所には、ボランティア導入や輪地切り省力化などで野焼きを続けられるようにしなければならないし、野草の価値を見直し、採草利用をより増やすことに対して支援できないかとも考えている。後継者については、将来、草原に関わっていきたいと思う子供たちが出てくるきっかけになればと、草原環境学習に取り組んでいる。このように、様々なことを重ね合わせて、草原を維持していく手助けができないかと考えている。(環境省)

■調査の情報が出ることにより、植物の盗掘が増えることが心配
植物の盗掘に頭を痛めている。この間、現場を押さえて注意したところ他の牧野組合の人間だった。牧野組合員自身の意識を高めることが必要だ。調査をして植物の情報が出ると、そこが狙われるのではないかと心配だ。(牧野組合)
貴重な植物、特にお金になる植物がある地域なので、盗掘の問題は大きいと思っている。一般的な植物は紹介していきたいが、貴重なものはあまり情報を出さない。さらに、組合員だけではなく、全体に植物の貴重さや保全についての意識の向上もしていかなければならないと考えている。盗掘への対応についても、環境省としては頑張っていきたいと考えているので、協力をお願いしたい。(環境省)

■草原環境保全に関連した調査の実施を
昨年、北外輪山の水源の調査をして、88箇所の源流があることがわかった。湿地が阿蘇の水を育む基本であり希少植物の生育地なので、この辺の調査をしていただきたい。植物は、20年ほど前の大滝先生による開花時期の調査後、かなり減っていると思うので、この機会に調査をしてはどうか。一昨年の秋に行った薬草調査では、18種ほどの薬草が秋の草に混入していた。これを食べている牛は、安心・安全ということでPRにもなるのではないか。その他、ロッキー山脈から持ってきて放鳥したコリンウズラやオオジシギなどの繁殖状況も調査してもらえるとよい。最後に、牛の頭数や刈り干し切りが減り、谷間が殆ど切られないということで、谷間の未利用地の利用についても研究していただきたい。(NPO/NGO)
自然関係の調査は順次進めている。阿蘇は広いので、なかなか全域の調査は難しいが、木落でやっている調査なども含め、順次必要な場所について調査を進めたい。谷間などの未利用地の有効利用は、草原環境の面でも重要。九州バイオマスフォーラムなどと協力して、利用できる体制をつくれるとよいと思う。(環境省)

■牧野内の雑木やチカラシバ対策を
牧野内の雑木、改良草地のチカラシバが増えて困っている。その辺は環境省でどういうことを考えているのか。チカラシバ対策として、簡易的な牧野改良をしても3、4年しかもたないので、国などの事業で何とかしてほしい。千年の草原を後世に伝えていくため、一所懸命取り組んでいるが限界がある。組合に負担がかからない事業を進めてほしい。(牧野組合)
県の普及センターから、チカラシバが出穂した直後の8月上旬頃に刈ると翌年は弱くなるという指導があり、2年ほど続けた結果、勢いが弱ってきている。(牧野組合)
環境省:牧野の中で雑木やチカラシバなど様々な問題があり、特にチカラシバは大きな問題ということは理解している。環境省は野草地の環境保全に取り組んでいるが、牧野が元気で、草原を維持管理していただくには、人工草地の健全な利用も非常に重要と考えている。農政の関係ではあるが、環境省からも話ができればと思っている。(環境省)

■草原から収益を生む利用について方向付けを
有畜農家が減って1戸の飼育頭数が増えたという形の中で、どうやって草原を維持していくか。自分たちが入会地として持っている草原から、収益を生み出すことができれば、おのずと原野の保全が図られると思う。入会権者全体に収益があるような利用の仕方についての方向付けを再生協議会でお願いしたい。(牧野組合)
環境省としては豊かな阿蘇の野草地の保全ということで取り組んでいるが、それだけでは成り立たない。実際に牧野を利用している牧野組合の方々と一緒に、利用もしながら野草の保全を図っていくといった、利用と保全のバランスをとりながら考えていこうと、今回紹介したような調査を始めた。地元の方が中心になってやっていただく事業を進めていきたいと思っている。(環境省)

■組合等による調査をきっかけに、国民全体で保全する仕組みづくりへ
木落で行っている調査の位置付けについて協議会の中でも考えていきたい。草資源の利用と草原の豊かな生態系がどう結びついているかを明らかにし、利用することで守っていけるのがふさわしいやり方だと考えている。
  福岡県では、水田で植物や虫がどれくらいいるかという調査などに対して、お金を払うシステムを考えている。貴重な植物を保全する営農作業に対して、面積当たりでお金を支払うもので、環境を保全する皆さんの活動に対して国民が何らかの支援をするということ。これは「環境支払い」と言って、ヨーロッパ諸国ではかなり確立されている。そうしたことにつながる調査を、阿蘇で木落が初めて手掛けたという貴重な事例だと思う。そういう政策提言の中で、皆さんの活動や情報を取り入れていきたい。(研究者)

 
掲載日:
H18.5.12
発信者:
環境省阿蘇くじゅう国立公園管理事務所

 
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