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トピック

【報告】 1月3日 熊本日日新聞に阿蘇草原再生事業が紹介されました。
 
座談会 阿蘇の草原を守る 〜私たちに今、できること〜

【出席者】
 阿蘇町長・阿蘇グリーンストック理事長 河 敦夫氏
 環境省阿蘇くじゅう国立公園管理事務所長 新井 正久氏
 野焼き支援ボランティアの会代表 奥村 恭一氏
 野焼き支援ボランティアの会会員 中島亜紀子氏
 
【コーディネーター】
 作家・阿蘇草原再生懇談会座長 光岡 明氏

 財団法人阿蘇グリーンストック(理事長・河敦夫阿蘇町長)が昨年12月、環境省から自然公園法に基づく「公園管理団体」に指定された。国立公園での公園管理団体指定は全国で初めて。阿蘇では畜産業の後継者不足などで草原維持が困難になっており、今回の公園管理団体指定は、草原保全に取り組んできた阿蘇グリーンストックの活動をさらに後押しすることになる。公園管理団体指定を機に、河町長をはじめ、環境省阿蘇くじゅう国立公園管理事務所長の新井正久氏、野焼き支援ボランティアの会代表の奥村恭一氏、同会員の中島亜紀子氏の4人に阿蘇グリーンストック活動の意義や今後の取り組み、草原維持の在り方などを語ってもらった。コーディネーターは作家で阿蘇草原再生懇談会座長の光岡明氏。阿蘇グリーンストックの活動や野焼きボランティアの初心者研修会なども併せて紹介する。
光岡 
 財団法人阿蘇グリーンストックが昨年十二月、全国で初めて「公園管理団体」に指定されました。「公園管理団体」とはどういうものなのでしょうか。

新井
 
 国立公園を管理、維持していくには国だけではなく、地方自治体、地域の方々の協力が不可欠です。公園管理団体制度とは市民などが自然の風景地の保護、適正な利用の推進に自発的に取り組んでいただくことを目指しています。一昨年の自然公園法の改正によりできた制度です。

光岡

 指定された理由とは。

新井

 公益法人やNPO法人など一定の活動能力を持っている法人に、自然の風景地の維持管理に協力してもらうわけですが、阿蘇グリーンストックは、野焼きなどの草原保全のための支援活動が評価されました。

光岡

 阿蘇グリーンストックの理事長も務めておられる河町長いかがですか。


 阿蘇グリーンストックは平成七年に設立しました。それ以来、草原保全活動など行ってきましたが、活動が認められ、うれしく思っています。その半面、守っていく責任をあらためて感じ、気の引き締まる思いです。

光岡

 奥村さんは設立当初からボランティアに参加していらっしゃいますね。

奥村

 私たちの活動が環境省から認められたことで、大変うれしく思います。また、ボランティアに参加した仲間の誇りだと思います。

中島

 私はボランティアとして参加して二年になりますが、私もうれしく思っています。指定をきっかけにもっと多くの人が参加してくれるといいと思いますし、またそれを楽しみにもしています。

■恩返し
 
光岡
 草原維持に大変な努力を払われていると思いますが、人手不足やさまざまな困難が伴うと思います。河さん、その点はいかがですか。


 阿蘇の草原は日本の国立公園の草原面積の三分の一を占めていると聞いています。それを千年ほどにわたり維持してきたわけです。それには農業、畜産業が大きな役割を果たしてきました。ところが第一次産業の低迷で後継者不足が生じ、牧草地を放棄せざるを得ないところまで追い込まれている牧野組合や畜産農家もあります。そうした中、野焼きボランティアなどの活動が、大変な手助けとなっています。ボランティアの支援がなければ現在の阿蘇の草原はないと言っていいと思います。

光岡
 ボランティアに参加された一番の動機は。

奥村

 熊日で野焼きボランティア募集の記事を見たのが直接のきっかけでしたが、以前から阿蘇の草原の素晴らしさを感じていました。特に熊本都市圏にとっては阿蘇は飲料水の水源地です。そうした意味から阿蘇への恩返しという気持ちも強いですね。またボランティアを通して見知らぬ人々との交流、仲間探しという気持ちもありました。

中島
 趣味で登山やキャンプを楽しんでいますが、自然保護のボランティア活動にも興味があり、趣味を生かせるボランティアとして参加しています。

光岡
 ボランティアが増えることについて、河さんいかがでしょうか。


 もちろん大変ありがたく思っています。国立公園は国民共有の財産だと思います。つまり阿蘇の草原は地元住民だけのものではなく、それ以外の地域に住む人のものでもあります。ですから地元住民と協力していろんな方々が阿蘇の草原を守っていただけるなら、これほど喜ばしいことはないと思います。地元住民だけでは維持が難しくなってきていた草原維持を、救っていただいたのがボランティアの皆さんなのです。今後も大きな期待を寄せています。

光岡

 環境省では野焼きの際、防火帯になる輪地づくりに「モーモー輪地切り」と呼ばれる取り組みや、小規模な林の伐採をされているようですね。

新井
 草原維持には野焼きが必要ですが、それには輪地切りが欠かせません。人手不足や高齢化が進む中で、輪地切りをすることが難しくなってきています。そこで牛に草を食べさせることによって輪地切りをするのが「モーモー輪地切り」です。また野焼きする草地に隣接する林が、生育が良くなく点在している場合、輪地切りの労力を減らすため取り除いています。

光岡
 輪地切りは大変な重労働だそうですが、ボランティアに参加されてどう思われましたか。

奥村
 輪地切りは平地での作業ならそれほどでもありませんが、斜面での作業が多く苦労します。刈払機や大鎌を使った大変危険な作業ですが、日ごろ経験しない作業で流した汗に、やり遂げたという喜びを感じます。

■自然再生
 
光岡
 ところで環境省では草原保全を進めるため「阿蘇草原再生懇談会」を設置しましたが、草原の「維持」から「再生」に変わったのはどういう経緯でしょうか。

新井
 平成十四年三月に新しい「生物多様性国家戦略」という考えが国から打ち出され、三つの危機が示されました。一つは開発などがもたらす種の減少や生態系の破壊など、二点目に自然に対する働きかけが少なくなることによって起きる里地里山などの環境変化や種の減少が挙げられています。三点目は日本にいない外国原産の種が日本に入ってくることによって、生態系が乱されることです。この三つの危機に対して、今後取り組む方向性の一つとして自然再生が挙げられています。例えば、メダカも絶滅危ぐ種になっていますが、これらが生息する環境を以前のように戻していこうということです。

光岡
 阿蘇の草原は二点目の危機に該当するわけですね。

新井
 そうです。阿蘇の草原は人出不足などにより、人の手が加わらなくなったため姿や形が変わりつつあります。阿蘇の草原は、地域の住民が維持してきましたが、最近は阿蘇グリーンストックやボランティアの支援によりその維持が図られています。

光岡
 具体的にはどういう取り組みをされますか。

新井

 一言で阿蘇の草原と言いましても、さまざまな生態系があります。例えば家畜のエサやたい肥づくりなどのために行われる採草によって維持されている草原は、そこにハナシノブやヒゴタイなど、阿蘇に固有な植物が見られます。採草がうまく行われないと森林になったり、貴重な植物がなくなったりしています。草原のそうした生態系の多様性に合わせて草原を維持し、再生していく必要があるのです。

光岡
 草原再生についてどういう将来像を描いておられますか。

新井
 広大な草原景観は地域のみならず国の宝だと思いますので、ぜひ守っていくことが必要です。そして多様なタイプの草原を維持していくことが必要です。また、阿蘇の草原は基本的には農業、畜産業で維持されてきましたので農畜産業の振興も必要でしょう。さらに、阿蘇には観光客など多くの人が訪れていますが、草原を維持することが観光振興につながり、ひいては地域貢献にも役立っている側面があると思います。そうした総合的な観点から草原の維持、再生に取り組んでいきたいと思います。


光岡
 阿蘇の草原は農畜産業で維持されてきましたが、観光産業などいろんな産業が連携しないと有効な活用はできないでしょうね。河さん観光の面からご意見を。


 以前観光は物見遊山的なものでしたが、自然を体験したり、癒やしを求めたりする観光に変わってきていると思います。

光岡
 阿蘇には魅力的な神話が残っていますね。これを活用することなど新しい取り組みはありませんか。

■スローな阿蘇
 
 
 阿蘇郡内には十二町村がありますが、この総面積は佐賀県の半分、香川県の約七割の面積に相当します。この広い阿蘇が一つになり、ゆっくり、じっくり阿蘇を見て体験してもらうスローな阿蘇づくりに取り組んでいます。一日、駆け足で回るだけというのはもったいないですよ。ぜひ連泊してもらって阿蘇を知ってもらいたいですね。それに神話もありますが、文学の足跡もたくさん残っています。

新井
 草原が持っている役割や地域の歴史、文化を題材にした体験型観光と、環境教育はこれから重要性を増すでしょうね。また阿蘇は周辺地域の水源地にもなっていますので、多くの方々に草原に関心を持っていただきたいと思います。

光岡
 阿蘇は環境教育にもってこいの地域でしょうね。


 関東、関西方面からの修学旅行生を多く受け入れています。農業、畜産業の体験だけでなく、輪地切り体験の希望もあります。対応に苦慮するほど好評です。

光岡
 ところで昨年暮れ、自然再生推進法という法律が成立したそうですが、どういう法律ですか。

新井 
 この法律は議員立法で成立しました。全国で自然再生を図っていく必要があるわけですが、自然再生を進めていく上で、行政だけではなく、地域の方々やNPO、NGOなど多くの人が参加してもらうことが重要と位置づけています。

光岡
 環境省では阿蘇地域自然再生推進計画を実施、推進しています。具体的にはどのようなものですか。

新井
 阿蘇草原の実体を調べ基礎的なデータを収集し、多様な草原がこれからも維持されていくシステムづくりを目指しています。それには草原維持の活動の支援の仕方や、草原管理の省力化法などを模索していきます。このほか環境行政と農政などが連携した草資源利用法も探っていきます。さらには草原情報の提供も図っていきたいと思います。

光岡
 農政との連携で河さんご意見は。


 草原維持に第一産業の振興は必要不可欠と考えています。特に最近は食と農の安全性が注目されています。阿蘇の草原で育った健康で安全な牛というブランドづくりをしていかなければならないと思います。

光岡
 都市住民として草原維持にできることは何でしょうか。

奥村
 肉は地元産を買うなどすぐできることからやるべきでしょう。また、元気のある若い人がボランティア活動に参加することで草原維持に弾みもつくのでは。

中島
 阿蘇の草原維持がいかに大変かを訴えていきたいですね。私自身、ボランティアを通して地元の農家の方々と接し、農業へのこだわりや現状を直接聞くことで農産物の品質や安全性に対して、心から信頼できるようになりました。都市住民と地元農家の接点をつくっていくことが、草原を守る人の輪が広がることにつながるのではないでしょうか。

■地元と共に
 
光岡
 草原を守るには今後どういう方向性が必要でしょうか。


 一次産業が振興すれば草原は維持できます。それが無理なら国立公園は国民共有の生命財産という認識を皆さんに持っていただいて、地元と一体になって守っていただきたいと思います。

新井
 各省庁が連携して取り組む必要がありますし、広く情報提供して現状を知ってもらうことが大切です。農業、畜産業を柱にしながらも、維持活動をサポートするシステムづくりが必要でしょう。いずれにせよ、多くの人の参加がカギを握ると思います。

奥村
 野焼き支援ボランティアと地域の人々、牧野組合の方々との交流が大切だと思います。また、ボランティア間のネットワークの構築なども必要だと思います。

中島
 少しでも自分たちでできることをやっていきたいですね。遠方からの参加者のために、簡易宿泊施設でもあれば参加しやすくなると思います。

光岡
 皆さんのお話を伺って私は、阿蘇の草原は何としても守っていくべきものだという感想を持ちました。草原を守るにはボランティアに参加して直接的にかかわるだけでなく、牛肉を購入するなどして地元畜産農家を助け、間接的に支援することもできます。いま、いろんな形で多くの人による支援が不可欠な時であることを、あらためて実感しました。


 
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