なぜいま、阿蘇の草原再生なのか

 千年にわたり、人の手によって創られ維持されてきた阿蘇の草原は、その結果として多様な草原生態系や豊かな景観を生みだしており、人が自然と共に生きてきた文化の象徴ともいえます。しかし、長い歴史に支えられた、日本が世界に誇れる資産である阿蘇の草原は存続の危機を迎えています。この貴重な阿蘇の草原をどうやって守っていくのか、真剣に考える時を迎えています。


人々の生業とともに維持されてきた阿蘇の草原
 

草原と阿蘇山 草千里で有名な阿蘇の草原。世界最大級のカルデラ地形の上に広がるこの広大な阿蘇の草原は、独自の景観を生みだし、多様な動植物の生息・生育の場ともなっており、1934年には国立公園に指定されました。
 実はこの阿蘇の草原は、人の手が入らないと藪や林になってしまうのです。平安時代より続いている阿蘇の草原は、牛馬の放牧地として利用され、刈り取った草は牛馬の飼料となり、緑肥や堆肥として農業に利用され、茅葺き屋根の材料になるなど、人々の暮らしを支えるものでした。だからこそ、草原が藪や林へと変わらないよう、危険を伴う野焼きを行い、千年にわたり維持されてきたものなのです。


野草地が多くを占める広大な草原
阿蘇の草原千年の歴史を紐解く
草原はどうやって維持管理されているのか
草原の種類と特徴を知る


阿蘇の草原の価値
 
 

ヒゴタイの花 阿蘇には、年間1800万人を超える観光客が、広大な草原や、牛馬が放牧されたのどかな風景を楽しみに訪れています。多くの人たちに愛される草原の風景は阿蘇の大きな価値といえます。しかし、草原の価値はそれだけではありません。
 一見ススキしか生えていないように見える草原には、阿蘇にしかみられないヒゴタイやハナシノブをはじめとして、草原特有の多様な動植物が生育・生息しています。
 また、草原は牛の放牧地として、安心・安全な肉用牛を生産し、日本の農畜産業を支えています。加えて、草原に降りそそぐ年間2500mmを超える多量の雨は、広大な大地に滲みこみ、6つの一級河川の水源となり、約220万人に水を供給する九州の水がめとなっています。
 さらに、千年に及ぶ人と草原との関わりは、野焼き、盆花採り、干し草刈り、草小積みなど独自の文化を生み出し、それらは阿蘇の自然とともに多くの文学作品にも取り上げられています。


阿蘇の草原の価値
 
 
 
 
 

 



阿蘇の草原の危機
 

急斜面で行われる輪地切り 人々は生業として草原の草を利用してきましたが、近年、化学肥料の普及などにより緑肥、堆肥としての利用が減るとともに、茅葺き屋根の家もなくなるなど、農業形態や生活様式の変化にともない利用されなくなってきています。また、牛肉輸入自由化と価格の低下などの影響による畜産業の低迷、後継者不足・兼業化などにより、農家で飼育する牛馬の頭数が減っています。その結果、採草や放牧が行われることなく放置される草原が増えてきました。
 草原を管理している牧野組合でも、組合員の高齢化や畜産を辞める農家が増えてきたことから、野焼き・輪地切りといった草原維持のための作業がむずかしくなっています。
 これらのことから、草原面積の減少・草原の変容が進んでいます。それに伴って、国立公園としての景観が損なわれ、草原生態系の多様性が失われることなどが問題にされるようになりました。

畜産業の低迷増加する非農家と無畜農家困難になる草原の維持管理
草原面積の減少・草原の質の変化地域別にみる草原の現状




千年の草原を子供たちに引き継ぐ
 

夕焼けの米塚  阿蘇の草原は千年の昔から、そこに住む人々が牛馬を飼い、草を利用した農業を営むために自然に手を加え、維持されてきた二次的自然です。そこには、阿蘇にしかないすぐれた景観と草原特有の多様な生態系があり、草原を利用し、維持していくための固有の文化が育まれています。
 そうした阿蘇の草原は、訪れる人々の心を開放し、癒してくれます。また、近年、食べ物の安全性が問われる時代となり、自然の草を食べたあか牛の価値や有機農業による農業生産が見直され、阿蘇の草原は再評価すべき時を迎えています。
 このような阿蘇の草原は、そこに住む人々にとっての誇りであるとともに、日本が世界に誇る自然と人間とが共生してきた文化の象徴です。この国民的に価値ある自然を守り、そして再生していくことは大きな意義があります。私たちはこれからも、千年の草原を子供たちに引き継いでいくべきではないでしょうか。


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