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関係者インタビュー  

草原再生への期待
池辺伸一郎氏インタビュー

<プロフィール>
阿蘇火山博物館館長、NPO法人阿蘇ミュージアム理事、阿蘇草原再生協議会草原環境学習小委員会委員長

 

 

池辺伸一郎氏の写真

質問

 

まず、阿蘇とのかかわりを教えてください。

 大学では地学系の学部に所属していまして、もともと星とか火山とか地震などに興味を持っていました。社会に出て地質調査のコンサルタントに就職しましたが、ある日、阿蘇の博物館で人を捜していると言うことを聞き、すぐに行くことに決めました。博物館に入ってしばらくしたころ、中岳の火山活動が活発化しました。その際に、夜一人で火口へ登って赤熱現象を見ました。もちろん、いろいろな意味で怖かったのですが、そのときに見た、火口底の幻想的な赤い光が、今でも忘れられません。以来、火山というものに魅せられて今に至っています。

 博物館では、入社当初は営業から事務まで何でもさせられました。しかし、自分の時間も使ってできるだけいろんなものを見て歩きました。阿蘇についてはほとんど何も知らなかったので勉強しました。直接的には火山に関係のなさそうなものでも、どこかで関わっている、そんな事柄がいろいろあって、知る”おもしろさ”がわかってきました。そうしてやっているうちに、平成12年2月から館長という役目に就きました。



質問

阿蘇火山博物館や阿蘇ミュージアムとして、体験学習や環境学習にも熱心に取り組まれていらっしゃいますが、どのような活動をされていらっしゃるか。簡単に教えてください。また、その中で阿蘇の草原とかかわるような活動や、参加者の方の草原に対する反応などありましたらお聞かせ下さい。

 まず、博物館という施設の役割についてお話しておく必要があると思います。従来の博物館という施設に対する一般的なイメージは、いわゆる”博物館行き”という言葉があるように、古くていらなくなったようなものを集めて展示するというものです。このこと自体は、博物館の重要な役割の一つではあります。

 しかし、展示するためにはそれなりの調査研究という過程を踏む必要があります。それでなくては単なる”見せ物小屋”に過ぎません。そのものの持つさまざまな情報を引き出して、一般に発信するという作業が重要になります。広く一般に情報を発信する方策の一つが展示であって、そのほかに体験学習や環境学習などの実施も重要な方策になります。つまり、展示の他に様々な普及活動を展開していくことまで含めて「博物館」と言えるのです。
 体験学習や環境学習については、近年では九州内の小学校の修学旅行や阿蘇郡市内の小中学校などの受け入れが多くなってきています。もちろん大人の方たちを案内することも多いのですが、そういった活動を通して特に多くの子どもたちに阿蘇火山の持つ自然の素材だけではなく、自然の上に育まれた文化や人々の営みなどについて理解してもらいたいと思っています。
 以前に、阿蘇市在住の大滝典雄先生とともに、東京からの一般の人40名くらいを米塚近くの溶岩トンネルへ案内したときのことです。トンネルの見学を終え、大滝先生が「この広い草原の中に、いま私たち40数名がいるだけです。何も考えなくていいですから、しばらくこの空間を楽しんでください。」とおっしゃいました。しばらくすると、参加者の中の何人かの方が涙を流しながら「こんな感動を味わったのは初めてだ。」とおっしゃりました。阿蘇の火山や草原には、人々の心を動かすものが存在しているようです。こういった感動をとおして、様々な学習活動を提供していきたいと思っています。


質問 今後の活動に対する意気込み、また、活動を進める上での課題をお聞かせ下さい。

 阿蘇でもこれまで以上に、さまざまな活動を展開する人々やグループが増えてきました。阿蘇火山博物館やNPO法人阿蘇ミュージアムもそんな中の一つですが、私たちの活動は、先にも述べたような、いわゆるミュージアム活動を阿蘇で展開することです。つまり阿蘇や火山に関連した資料を収集保存し、調査研究を行い、展示や学習活動を通して情報を発信していくということです。これからもこの基本路線を継続するとともに、今後大事になってくるのは、他の活動団体との連携と言うことです。私たちの活動の特色や強みを他の活動にも生かし、さらには他の活動の特色を私たちの活動の中に反映させていただく。そのようなことが、より幅のある情報発信につながっていくものだと思っています。もう一つ大事なことは、牧野組合をはじめ地元の人々とのつながりを深めていく必要があるということです。阿蘇の人々の理解と協働なしには、どのような活動も本当の意味で成り立たないのではないでしょうか。



質問 環境省では、阿蘇の草原を保全・再生するために草原環境学習の取り組みをはじめ、様々な取り組みを進めています。これらの取り組みに期待することをお聞かせ下さい。

 阿蘇の草原の再生・保全においては、様々な情報や、様々な立場の人の考え方を整理し、みんなで共有するといった基本的な部分が、非常に重要だと思います。逆に言えば、今、そのようなことを行うべき時期に来ている、そのような環境が整ってきたと言えるのかもしれません。これまでにも多くの場が持たれ、様々な議論がなされてきましたが、そういった成果もふまえて、実質的に先へ進んでいければと思います。

 今回の環境省を中心とした取り組みで、少しずつ(急激に変わる必要はない)そのような環境が整い、阿蘇や草原に関わりを持つ人々の意思の疎通が図られることを期待したいと思います。

質問 最後になりますが、これから阿蘇の草原保全・再生にどのように関わっていきたいと思われますか。池辺さまご自身が草原について感じていることなどにも触れながら、思いをお聞かせ下さい。

 先にも述べたように、草原というものには人の心に訴える不思議な力があるようです。私も火山の造る荒涼とした景観もさることながら、草原の景観に対しては何となくほっとしたような感動を常に味わっています。

 自分としては、阿蘇の草原は阿蘇の文化の象徴ともいえるものだと思うし、根本的な意味での草原の成り立ちを考える観点からも、阿蘇火山の活動と大きな関わりがあるものだと考えていますので、草原の保全や再生に関しての課題には大きな関心があります。
 草原の保全や再生といったことに対して、私自身、直接的な力は何もありませんが、草原再生協議会のなかの「環境学習小委員会」のメンバーとして、また阿蘇火山博物館やNPO法人阿蘇ミュ−ジアムの立場から、草原の保全・再生に関わり、阿蘇火山を通した環境学習活動を進めていきたいと思っています。草原問題については、様々なアプロ−チの仕方があると思いますが、私としてはそのような普及活動からのアプロ−チを中心に考えていきたいと思っています。

 
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