ホームへ
 
関係者インタビュー  

茅文化を残していくことが、草原再生の一つの形
 湯浅陸雄氏 財団法人阿蘇グリーンストック幹事

<プロフィール>
阿蘇市内牧生まれ、内牧在住、阿蘇町ホタルの会会長、阿蘇市新宮牧野組合員

湯浅陸雄氏の写真

質問

 

.(財)阿蘇グリーンストックは、草原に代表される阿蘇の緑を、農村と都市と行政が連携して後世に引き継いでいこうと設立された財団で、湯浅さんは幹事をされているということですが、財団とどのように関わってこられたのか、教えてください。

 財団が設立されて、今年で10年になりますが、私は財団設立にも協力してきました。
  きっかけは、今から20年ほど前、阿蘇の草原に目を向け、草原を阿蘇の資産のひとつとして後世に残す活動を展開したいと考えていた熊本大学の佐藤先生や現専務理事の山内さんにお会いしたことです。私は、先生方の阿蘇への思いに共鳴し、活動を支援してきました。当初は、草原を守るために荒れた草原に馬や牛を放牧したり、草原維持に欠かせない野焼きなどの作業の人手が不足している牧野に、我々地元の人間が応援に行くという活動が中心でした。それが次第に、都会の人たちがボランティアとして加わるようになり、山内さんらを中心に組織化され、その受け入れ窓口として財団が設立されました。

  私は、地元農家の立場から、ボランティアの人たちに作業の技術指導などを行ってきましたが、当時は本業があったため休日しかお手伝いができなく、4年前に定年を迎えてから、本格的に活動に関わるようになりました。



質問

財団を設立してから10年間で変化してきたことはありますか。また、今後どのような活動が求められると思いますか。

 立ち上げの頃は地元の人に活動意味をなかなか理解してもらえず苦労もありましたが、輪地切り・野焼き支援ボランティアの導入に加え修学旅行生の受け入れなどの活動によって、最近は地元の方からもだいぶ評価されるようになってきたと思います。

  今後は、私たちの活動をもっと村の人に知ってもらい、一緒に活動していきたいと思っています。そのためにも、外からいらっしゃるボランティアの方には、進んで村の人に声をかけてくれるようお願いしたいと思います。村の人は本当は都会の人たちと付き合いたい気持ちがいっぱいなのです。言葉をかけてあいさつしてください。それによって心を開くようになります。都市と農村が連携するには、お互いの信頼関係が大切なんです。

  また昨年は、都市住民と地元の人々が共にゆったりと田舎の暮らしを楽しむことのできる空間として、阿蘇市西湯浦に「ゆたっと村」をオープンしました。そこでは農作業や郷土料理づくり、紙すきなどの体験活動も行っていますが、阿蘇には、草履作りの名人とか、冷しきゅうりをとてもおいしく作る人とか、伝統技術を持つおじいちゃん、おばあちゃんが大勢いますので、今後は、そういった人たちの力を借りていくことが大切だと思います。そうすることで、より地元に密着した活動が展開されるのではないかと思っています。

  それと子どもの情操教育に、もっともっと阿蘇の自然を生かしたいですね。子どもは、自然に触れることでいろいろなことを学び、人へのいたわりの気持ちも持つようになります。そういうことが今後は特に大事だと思います。実際、私が会長を務める「阿蘇町ホタルの会」では、何度か地元小学校の総合学習によばれ、「水」や「野の花」などのテーマで話をしています。しかし、残念なことに、今の学校教育では、子どもを遠くまで連れ出すのが難しいため、学校から歩いて行けるところしか行けません。草原まで足を伸ばせば、春の野の花、夏の花、秋の花など、いくらでも自然と触れ合えるし、ホオジロの罠作りや、川遊びなども楽しめます。今の時代、自然に触れて心を癒しながら、新しいものを作り上げていくことが必要なので、財団でも子どもの教育を支援していくようなことができればと思います。



質問

阿蘇の草原を守るために多方面にわたってご活躍されていますが、今後の草原再生についてのご意見をお聞かせください。

 阿蘇は水の源です。阿蘇から、大きな6本の河川がはじまる。だからこそ、阿蘇の草原再生では、水の源となる阿蘇の湿地を守ることが重要だと思います。そして、この草原の湿地が守られているのは野焼きのおかげです。草原が藪になると湿地はなくなります。だから、野焼きは続けていかなければなりません。

  それと北外輪山の壁は、今ほとんどスギやヒノキが植林されているため、降った雨が、木からどんどん水蒸気として大気中に逃げてしまいます。木のせいで地中に蓄えられる水が減ってしまいます。このままでは斜面の崩落か水不足になってしまいます。しかし、広葉樹ならあまり水を吸わず、落ちた葉っぱが十年すればスポンジ状になって重なっていってその下から水が流れ出てくるようになります。その為、植林を広葉樹林に変えていく運動をしていかなければと思っています。広葉樹林の森をしっかりつくっていくことが、将来、十年、百年先に大きく関わることだと思います。

  そこで「阿蘇町ホタルの会」では、北外輪山沿いに、古閑の滝から赤水までの源流調査をしています。現在は、わずか20kmの間に80数本もの源流があることが分かり、その水質調査をしています。県の保健所にも水質検査を依頼しています。今後は、下流域の人と一緒に調査ができればいいと思っています。それによって上流を意識してもらえるようになりますから。

  それから、草原の文化を受け継いでいくという点では、「とも」(土塁)*のことを忘れないで欲しいと思います。阿蘇の万里の長城ともいわれ、延々と続く「とも」は、1000kmはあると思います。先人の汗の結晶ですから、この土塁を体感できるようなものを作ってもらいたいです。

  最後にもうひとつ。茅文化を残していくことが、草原再生の一つの形としてあるのではないでしょうか。昨年、ミルクロードなどの道路沿いに草小積みをつくった試みはとてもよかったと思いますので、是非続けていただきたいと思います。

*とも(土塁):昭和の始めに、放牧地と採草地を区別するために阿蘇の草原に人力で作られた境界線。高さ1.8m、底辺1.8m、上部の幅0.6mという跳び箱状のかなり大きなもので、牛馬が乗り超えることができない。阿蘇全体における総延長は、1000kmとも推定されている。


 
戻る
ページの上へ

お問い合わせサイトマップ
 Copyright.2006 環境省 All right reserved.(当サイト内に記載された文章・写真などの画像の無断転載を禁じます)
 ■阿蘇くじゅう国立公園管理事務所 〒869-2225 熊本県阿蘇市大字黒川1180 TEL:0967-34-0254  FAX:0967-34-2082 E-Mail:NCO-ASO@env.go.jp