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関係者インタビュー  

阿蘇草原再生協議会の取組みを応援します!
  草原を守る人々「鈴木康夫氏」

<プロフィール>
 九州東海大学工学部教授。昭和29年山形県に生まれ、福島県で育つ。19年前熊本に来て、現在は高森町民。専門は農村地理・地域資源学、主な研究は中山間地域の再構築など。衛星画像判読とGISを使った研究を進めている。

鈴木康夫氏の写真

質問

 

.阿蘇との関わりは?

 19年前、熊本へ来たときからです。大学の友人のつてで、しばらくして高森に家付きの土地を買いました。今は、家族と熊本市内のマンションに住んでいて、高森の家はセカンドハウスのようになっていますが、3年前までの5年間は家族みんなで高森に住んでいました。小学校教員の妻が、草部南部小学校(現在は廃校)に勤務したことがきっかけです。

  住民票は高森町に置き集落の一員として、今も公役に参加しています。年2回、草刈り機で町道の草刈りをします。お祭りのときのお宮の掃除や補修の手伝いとか、寄合いや宴会など集落の行事は盛りだくさん。週1〜2回の本宅泊まりと、集落の皆との語らいが私の活力のもと。



質問

どのような研究をしてこられましたか?

 もともとは、農業地理、農村地理が専門です。こちらでは、まず、中山間地の再構築について研究しました。平場の水田地帯における農村社会の再編過程と違い、山間地では集落住民の高齢化が進行し、将来の担い手もいない。草原だけでなく、田畑、森林、文化財などをこのさき誰が守っていくのかと、危機感を覚えました。そこで、阿蘇から宮崎にかけての山間地域で実態調査に入りました。

  19年前に私が阿蘇に来た時は、多くの農家で牛を3、4頭飼っていました。すでにトラクターが普及し農耕用ではなく、子牛生産(繁殖)と肥料生産のために牛を飼い、そのえさや敷き草を確保するために草原が維持されていました。朝草刈りの場所、干し草刈りの場所があって、共同で作業をしていました。阿蘇東外輪(波野から高森の山東部)にかけては、ほとんど同じパターンで、牛、田んぼ、それに葉煙草や高原野菜などの複合経営による収入で生活が成り立っていました。それが、今では、米つくりと葉煙草だけが生業となる形が増えています。牛肉の輸入自由化後に子牛価格が低落し、もうからない牛養いは農家の複合経営から切り捨てられました。



質問

GIS※について教えてください。

 大学の学部学科再編で、宇宙地球情報工学科(今はリモートセンシング学科)が新設され、6年前そこに異動になったが、パソコン音痴の私がGIS(地理情報システム)を始めるきっかけでした。

  それ以前には、熊本県からの委託を受けて、地形図から土地利用図をつくる仕事はしていました。地形図の色塗りをして、現地調査に行って確認して、違うところは修正して、どうしてもわからないところは空中写真を手に入れて修正していくという大変な作業でした。

  それが、衛星データを専用ソフトで画像処理して土地利用分類図をつくることができるようになりました。パソコン処理は専門の同僚のチョン・ムハタル先生がやりますが、分類項目やトレーニング・ポイントの設定はこちらが担当するというように、チームを組んでやっています。研究室にいて現地を知らない技術系の人だけでは限界があり、私のように社会科学、農学など現場で研究をしている人間と組むことに意味があるわけです。

  私にとっても、衛星画像を使うようになって、研究の幅が広がりました。以前は狭い範囲でしか実証できなかったものが、広域で土地利用をきちんと提示できるようになりました。

GIS:GeographicInformation Systems(地理情報システム)の略で、地図上に様々な情報を重ね合わせて表示したり、分析したりするシステムのこと。
トレーニング・ポイント:画像データを作成する際に、区分基準となるサンプルポイントのと。例えば、草原と広葉樹林、針葉樹林を分類する場合、採草地の野草の草原、広葉樹林、針葉樹林である実際の場所をサンプルポイントとして画像上から選んで決め、それを基準にパソコンにそれらと同じような場所を抽出させる。



質問 草原関係の調査について教えてください。先生にとってどんな収穫がありましたか。

 今回の調査は、草原の利用状況を調べるものです。放棄地、放牧地、採草地、茅野、そして改良草地の分類をするのですが、一番苦労したのはやはりトレーニング・ポイントの設定ですね。草原のタイプを何も知りませんでしたから、草原の勉強をすることから始めました。

  草原植生の専門家である瀬井純雄先生(波野小学校教頭)や(財)自然環境研究センターの方々といっしょに現地を回ったのが、私にとっては、最大の収穫でした。草原を区別するときには、その専門家と歩いて、実態を知らなくてはだめです。農地の利用区分はわかりますが、草原には戸惑いを感じました。もう一つ収穫があります。自然研やメッツ研などのコンサルタントの方の仕事をじかに見られたことです。コンサルタントの取り組み手法とまとめ方、そういうものがとても勉強になりました。


質問 学生さんを連れてボランティアツアーにも参加なさっていますが?

 学生を参加させたねらいは、3つありました。1つは、私の研究現場をみてもらいたかったこと。研究には目的と意義をはっきりさせておく必要があることを現場で解説しました。2つめは、共同作業で草原が保全されていることを学生に知ってもらい、その作業を実際に体験させること。うちの学科は共同で取り組む作業が多いので、いっしょに何かをすることの大切さを知る絶好の機会でもありました。3つめは、環境教育の一環ですね。阿蘇という具体的現場で自然環境、社会環境を知る。人間に個性があるように、個々の地域にも個性があります。阿蘇の環境側面での個性を現地で指導しました。

  阿蘇は、教育のフィールドとしてこれからもどんどん活用していきたいところです。


質問 これからの草原再生について、先生の考えをお聞かせください。

 今後の草原保全においては、場所に即した計画性が必要だと思います。今回の草原分布図を見ればわかるように、阿蘇全体の草原や野草地を守ろうとしても無理があります。面的なまとまりをもって野草地がある北外輪地域だとか、中央火口丘の黒川牧野を中心とするあたりだとか、ある程度保護の場所を特定して、保全や再生を図っていくべきではないかと思います。さらにその中でどういうゾーニングをして保全していくか、湿地帯か、採草地か、放牧地かということですね。これまでの調査で実態がわかって、計画段階に入りましたから、どういうふうにして、具体的な保全計画をつくっていくか。これからが大変ですね。

  また、「共同性の再構築」も、一つの課題でしょうね。阿蘇は、農家が共同作業で維持してきたところです。牛を飼っている農家が、年に何度もともに働いて維持してきた。その農家の数が減っていて、現在のような危機に直面している。野焼きや輪地切りなどにボランティアがどう今後かかわっていくかを含めて様々な取り組み課題があります。

  これからの地域づくりを考えると、よそから来た人も活力源になると思いますが、一方で、昔から培われてきたものを大切にする必要があります。例えば、お年寄りは、集落の景観が荒れるのをひどく気にします。私が古い家を買ってリフォームしたことや、荒れた厩なども改築してきれいにしたら、集落のみんながとても喜んでくれました。集落の景観はみんなのものだとう公共の意識があるのです。そういう「集落景観の公共性」を大切にする意識を希薄にさせないよう、再構築していくことが大事だと思うのです。

  大学の調査研究においても「地域支援・地域貢献型」研究ということが大事になってきています。つまり、地域に入って調査をして学会に認められる論文を出すだけでなく、地域の要望に応えるような研究をしていくということです。専門家として地域のアドバイザーとしての仕事をすることもしかりです。今後は、私も研究者として、そういった点を重視していきたいと思っています。


質問 草原再生では、今後協議会をつくって進めていくことになり、9月末からメンバーの公募を行っています。この協議会は、研究者の方や地元の方など、これから野草地保全に向けて何かしていきたいという人たちを集めて、阿蘇の草原環境保全のあり方について協議する場です。先生にもぜひご協力いただきたいのですが。

 皆さんがボランティアとして参加することになるそうですが、交流の場として、いろいろな人と会えるいい機会ですね。行政はコンサルタントや大学に調査・研究を依頼しているけれども、協議会のメンバーが草原保全・再生の具体的プランづくりを引き受けるのも、いいことだと思います。地元の人たちが多く参加する協議会なら、それぞれが阿蘇や地元のことをよく知っていますから。われわれ研究者は具体的アイデアを文章化して取りまとめる形で、プランづくりの上で専門家としての役割を発揮できます。このような協議会をNPO化の方向もあるだろうし、おもしろい取り組みですね。ぜひやりましょう。



 
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