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関係者インタビュー  

草原を守る人々「梶原宏之氏」
(阿蘇たにびと博物館館長 「阿蘇のカルデラが博物館」 )

<プロフィール>
昭和43年、熊本市生まれ。久光製薬の中冨記念くすり博物館学芸員、熊本県庁文化企画課、県立博物館職員などを経て、現在阿蘇たにびと博物館館長。専門は民俗学、文化生態学(生態人類学)、文化地理学。

梶原宏之氏の写真

質問

 

梶原さんが館長をされている阿蘇たにびと博物館は、阿蘇のフィールド(現場)を展示室として、学芸員がガイドをするというユニークなスタイルの博物館ということですが、このような博物館を設立しようと思ったきっかけはなんですか?

 私は熊本市出身ですが、父が転勤族で全国を転々としました。そのため、ふるさとへのあこがれというか、熊本に住みたいという思いがずっとありました。熊本大学で民俗学を学び、日本文化研究のために九州の農山漁村を歩いて調査するうちに、自然に根ざして生きる人々のくらしについて知り、衝撃を受けました。地域の生活・文化が時の流れとともに忘れられていく中で、そうした人々の生き様を記録し、ストレートに地域に還元するような博物館を作りたいと思うようになったのです。

  自分の考える博物館をつくるために模索する中で、フランスのエコミュゼの思想を知り、日本で最初の成功例にしたいと考えました。1997年に阿蘇に移り住み、「谷人友の会」という組織づくりから始めて、2002年には事務所も構えました。

  ※エコミュゼ:エコミュージアム。フランスの博物学者リビエール(1897〜1985)が提唱した新しい博物館の概念で、日本では特別環境博物館や生活・環境博物館と翻訳される。地域全体を博物館と考え、自然、歴史、文化、生活、産業などの資源を見直して、地域づくりをしていこうというもの。


質問

博物館というと、建物や展示物を思い浮かべますが?


 そうですね。でも、たにびと博物館の場合は違います。事務所はありますが、博物館はカルデラのことをさします。ですから、博物館の面積は、カルデラの面積314k屬如展示資料はカルデラ内に住む地域の人々5万人ということになります。正学芸員は私一人ですが、客員学芸員として、地域内で専門知識を持っていらっしゃる方々にお願いしています。



質問

阿蘇の草原保全・再生に関連する取り組みとして、阿蘇を訪れる方々や阿蘇の子どもたちに、体験学習や環境教育の機会を提供していらっしゃるそうですが、詳しくお聞かせいただけますか?


 阿蘇の大きな特徴である草原という自然環境の成立が、そこに生きる人々の長年にわたる生産活動に大きく関わっている姿を描き出し、それをより多くの人々に伝えていきたいと思っています。
  具体的には、阿蘇を訪れる人々にフィールドツアーを提供したり、友の会の月例会「阿蘇さるく会」で現地を案内したり、地元小中学校の授業で子どもたちに阿蘇を伝えたりしています。
  また、2004年秋に、阿蘇草原再生の一環として草原維持管理活動の人手不足を補うため、都市住民らによる新たな作業支援の仕組みづくりを考えるモデルツアーが実施されましたが、その際、地元仲介窓口として参加し、ツアーの企画や支援希望者と受け入れ牧野との調整等を行いました。



質問 修学旅行生の受け入れも行っていますね。

 阿蘇には、修学旅行生が大勢来ます。かつては名所・旧跡めぐりが中心でしたが、最近は修学旅行を利用して総合学習をする学校も増えてきました。普段体験できないことを学習しようということですが、私は「体験」よりも「交流」を大切にしたいと思っています。阿蘇に人が生きていることをわかってもらいたい。
  訪れた子どもたちには、火山だけでなく、「阿蘇に暮らす人々とその営みの中で生まれた草原」のことも伝わるといいなと感じています。
  そこで地元畜産農家の人に協力してもらい、草原での作業を実際に手伝い、地域の人との出会いを通じて本当の阿蘇を知ってもらうというプログラムを提供しています。最初は農家側も学校側も不安はあったと思いますが、今では子どもたちはもちろん受け入れ牧野の方からも喜んで貰えるようになってきたと思います。


質問

今後の活動や阿蘇の草原再生についてのご意見をお聞かせください。


 草原を再生するかどうかの問題は、これから阿蘇に生きる人々の共通の課題です。私たちは多くの情報を共有し、多くの議論を重ねなければならないでしょう。そのためにこれまで阿蘇がどのような過程で成り立ってきたかの調査研究及び資料収集は不可欠です。そして忘れてならないのは、この阿蘇には貴重な動植物だけでなく、貴重な人間(畜産農家)もたくさん生きているということです。彼らなくして阿蘇は成り立たない。阿蘇を守るということは、つまり彼らを守るということでもあります。これが他の国立公園と異なる阿蘇の特徴であり魅力でしょう。そうした認識の共有から始められればと思います。
  私としては、今後も、草原を舞台にした体験学習を広めていくと同時に、博物館としての機能を充実させ、研究者をはじめ一般の人にも草原をより深く知ってもらえるような活動をしていきたいと考えています。



 
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