ホームへ
 
関係者インタビュー  

草原を守る人々「井信行氏」

(プロフィール)
産山村生まれ産山村育ち、満69歳
産山村上田尻牧野組合 前組合長
さわやかビーフ生産組合 組合員
阿蘇フォーラム 委員長
環境省阿蘇地域自然再生推進計画調査「情報発信・合意形成に関する検討部会」 委員

井さん写真
写真:40年ぶりの大雪に見舞われた阿蘇。井さんのご自宅の前で


質問阿蘇にこれほど雪が積もっているとは驚きました!
 私が子供の頃などはこんなもんじゃなかったです。40〜50センチ積もるのは当たり前で、一階の戸口が開かないこともよくありました。この頃はめったに雪が積もらなくなってしまいました。温暖化が進んでいるんでしょう。今年は珍しい。
 でも、これは阿蘇にとって実は嬉しいことでもあるんですよ。今、熊本市内などの平地部では温暖化の影響で野菜が出来なくなってきているでしょう。ビニールハウスで暖かくして野菜を育てることは出来ても、冷房をかけて育てることは難しいということなんです。阿蘇は高冷地農業の適地なので、これからは、涼しい阿蘇の出番だと思ってます。


質問阿蘇といえば「あか牛」も有名ですね。井さんはあか牛の加工・直販を行う「さわやかビーフ生産組合」 を組織されたリーダーだとおうかがいしていますが、なぜこの生産組合を立ち上げられたのですか。
 「本物の牛肉を消費者に食べてもらうには、生産者自身が直接消費者に売るしかない」「都会の消費者に阿蘇のあか牛の生産過程と生産経費を分かってもらって、そして納得した上であか牛を食べてもらいたい」と思ったからです。村の働きかけもあって、4人の勇士(有志)が集まって5年前にこの生産組合を立ち上げました。今も4戸の農家でがんばっています。
 でも日本人は、さしの入った霜降り肉を好む傾向があって、いくらあか牛が健康な肉であるといっても、価格も安く、最初は販売に苦労しました。
 しかし最近になって、BSE問題の発生や、消費者の健康志向の高まりによって、食品においては、安心・安全が見直されつつあります。牛の流通業界にもトレーサビリティシステムというのが導入されるほどです。このシステムは消費者がスーパーなどで肉を買うと、それがどこの誰に育てられた牛で、どんな飼料を食べて育ったかというのが分かるようになっているものです。
 でも私は、子牛の生産と肥育を別々に行っている畜産の現状からすると、ちゃんとこのシステムを動かすのは相当難しいことだと思っています。その点、私たちの「さわやかビーフ」は地域内一貫生産といって、まず牛が赤ちゃんの時から阿蘇の草原で育てていますので間違いがありません。小さな頃から草原の草を食べさせ強い内臓を作ります。その後肥育するわけですが、ここで飼料として与える穀類はなるべく国産のものを使用するよう心がけています。ただ、いまのところは穀類を大部分が国外に依存しているので、より安全な牛肉の生産するため、今年は国産穀類100%の実験をしてみたいと思っています。
 こうして試行錯誤を繰り返しながら赤ちゃんの頃から手塩にかけて育ててきたあか牛たちを、さらに自分の所で解体し、加工して消費者に直接届けていますので、間違いなく私たちの顔が消費者に見えるんです。
 そして、私たちが直接阿蘇の商品である「あか牛」を販売することによって、都会の人たちにより深く阿蘇を知ってもらえるんです。阿蘇の活性化には、都会の人たちの理解と、都市と農村との結びつきを強めることが重要なんです。そういう意味もこめて「さわやかビーフ」を販売しています。


質問売れ行きはいかがですか?
 これが嬉しいことに売れ行きが好調で、生産のほうが追いつかなくなっています。昨年は40頭分を販売しました。
 全国ネットでのテレビ番組で紹介されたことが大きいと思います。放送されてから、関東方面からの問い合わせがぐんと増えました。
 やはり、少々高くてもみなが安全で安心な素材を求めているということでしょう。


質問阿蘇の畜産は、まだ伸びる可能性を持っているということですね。
 そう思います。それに、畜産を続けていかなければ、いまある阿蘇の草原も守れなくなりますからね。草原で放牧しているあか牛があと5千頭以上増えて1万5千頭くらいになれば、草原は自然に守られる。そう思っています。 
 阿蘇は牛のえさである草がふんだんに生えていますから、畜産には非常に適した環境を持っています。これは畜産を行う上で、とても有利な条件です。
 昔は、草原の草が牛馬の餌となり、その糞が堆肥となり、その堆肥で野菜が作られていた。これからますます有機農法が求められることになると、こうした自然の循環が成り立つことのできる阿蘇という地域は、農産物の生産地としての価値が高くなる。こうした循環システムが再構築できれば、ますます畜産も農業も活性化してくると思うんです。


質問井さんのお話をうかがっていると、これからは阿蘇の時代だなという気がします。
 なんといっても阿蘇の人たちがここに住んでいることに自信を持って、元気に暮らしてもらうことでしょう。そうすれば、自然と阿蘇は活性化する。そうすれば、畜産ももっと元気になる。草原も守られるんです。畜産がどうのこうのというよりも、まずは、阿蘇の人たちが元気になることなんです。
  そのためにも私は「さわやかビーフ」の取り組みや、県内の無農薬野菜や無添加の農産加工品などを集めた生産者直営の共同店舗「かたらんね(注)」での販売をもっと広げて、都会の人に阿蘇の魅力を伝えていかなければならないと思っています。そして、都会の人に村に来てもらってさらに理解を深めてもらえれば、村の人もこれまで気づかなかった村の良さに気づいて、誇りを持って元気に暮らせるようになる。そういうお手伝いをしたいと思っています。

(注)共同店舗「かたらんね」
2003年6月28日、熊本県観光物産交流スクエアにオープン。25団体、企業、個人が出店。
 住所:熊本市手取本町8-2「テトリアくまもと」1階
 交通:市電熊本駅前から水道町電停まで約15分
 営業:10:00〜19:00
 定休日:第2・4月曜日(祝・祭日除く)
2004年3月までの営業だが、評判がよければ継続もあるとのこと。



 
戻る
ページの上へ

お問い合わせサイトマップ
 Copyright.2006 環境省 All right reserved.(当サイト内に記載された文章・写真などの画像の無断転載を禁じます)
 ■阿蘇くじゅう国立公園管理事務所 〒869-2225 熊本県阿蘇市大字黒川1180 TEL:0967-34-0254  FAX:0967-34-2082 E-Mail:NCO-ASO@env.go.jp